MapleStory杏鯖で活動中のちゃちゃ丸の日常です

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2009/12/23/ (水) | edit |

「はぁ・・・」


白い溜息で温める掌はまたすぐに冷えゆく。





2009年12月24日。


賑わう通りを横目に、不精髭の男は小さく呟く。


「あれから1年・・・か」


男は冷めた使い捨てカイロを揉みながらケーキ屋の自動ドアをくぐった。


家族やカップルでいっぱいの場で、小綺麗に並べられたショーウィンドウを真剣に眺める。


「このケーキ、3つください。」





35歳。フリーター。


去年ある企業をクビになり、アルバイトを転々としている。





ある企業、それは全国サンタクロース協会。


そう、男は去年までサンタクロースだった。





―――――――――――――――――――――――――


2008年12月23日





会議室のテーブルには今年訪問する子供たちのリストと、プレゼントが並べられていた。


「今年は多いな。まあ、喜んでくれる子供たちがこれだけいるんだから、頑張るか。」


ネクタイを緩め、大きくのびをした小太りの男はチラッと窓の外を見た。


「雪か・・・今年も冷えそうだな。」






サンタクロースの仕事は忙しい。


4月から10月いっぱいまで全国を飛び回り、プレゼントを渡す子供たちを選出する。


勉強を精一杯頑張った子、スポーツに汗を流した子、お年寄りに席を譲った子、兄弟の面倒をちゃんと見た子、いじめを注意した子・・・


ほとんど毎日そういった子を見つけ、11月にリストアップして準備し、12月24日にプレゼントを置く。


12月25日は子供の反応を確認し、翌日から1月まではリストの報告など、残りの月は講習に出なければならない。





トナカイの餌代も自費だ。


これで月24万円は安すぎる・・・





不満を言うとキリはなかったが、男は子供の笑顔を見るのが楽しみだった。





「よし、今日は終わり。明日に向けて早めに帰るとするか。」





男はそそくさと帰る支度をすませ、トナカイのいる小屋へと向かった。


「帰るぞ、お前ら。」


そう言うとひときわ大きな角を持った2頭のトナカイは男の前に並んだ。


男は横にあったソリを2頭につなげ、それにまたがる。


「自宅へ。」


途端に2匹と男はパッと消えた。





サンタクロースは他人に姿を見られてはいけない。


だから姿を消す力を身につけなければならない。10年もかかったんだぞ。





積もりかけていた雪がほんの一瞬だけ舞った。





12月24日。夜。


例の赤い服を身に纏い、ソリに積もった雪を払いのけた。


「今年も重いけどお前ら、頑張ってな。」


トナカイに話しかけ、男は夜空に姿を消した。





17件目の家に行く途中だった。


トナカイの様子がおかしい。


「どうした?具合でも・・・」


!?





順調に走り続けていた足が突然崩れ、途端に真っ逆さまに地面に落下した。





ドスン!!





人里離れた山奥で雪のクッションで一命はとりとめたが、足がもうだめだ。トナカイたちも怪我をしていてとても立てる状態じゃない。


「なん・・・だ・・・?」


1匹のトナカイの足には落下のときの怪我とは別で、明らかに大きな傷があった。





男は悟った。


ソリの柄で削ったまま走っていた。それに気付かずに俺は・・・。





入社して以来ずっと一緒だったこいつらの何を見てきたんだ。


何も見れてないじゃないか。


それなのに餌代がかかるだの文句を言って・・・。





足が動かない。


助けを呼ぶのも不可能だろう。


せめてこいつらだけは助けたい。





男は持っていたプレゼント袋を取り出し、ありったけの食料を集めた。


勿論子供用のお菓子しかなかったが、糖分が高い物の方が寒さにはいいだろう。





男は雪の上にそれらを撒いた。


子供たちの1年を棒に振る行為をしてしまった。





薄れゆく意識の中で子供の笑顔が消えてゆく。





・・・





男が目覚めたのは見知らぬ病院だった。


どうやら助かったらしい。


同僚の話によるとトナカイが本社に戻り、場所を知らせてくれたようだ。


そんな漫画みたいな話が本当にあるものかと驚いたが、本当のようだった。





しかし会社は勿論クビ、自前のソリも没収された。上司からは気の毒だと言われながらもサンタクロースの秘密は絶対と口土産を渡され、あっさりと辞めるハメになった。


規約違反は規約違反なので仕方ない。





これで1人のサンタクロースがいなくなった。





―――――――――――――――――――――――――


「サンタなんていないんだよーだ!」





ケーキを受け取り、店を出る直前だった。


子供の声が響く。母親とクリスマス用のケーキを買いにきたところだろう。


「そんなことないわよ。」


「だって、アキラくんがそう言ってたもん!本当はお父さんなんだって!」


「サンタさんはね、いい子にしてる子のところにしか来てくれないのよ。だからタクヤもいい子にしてたら絶対にきてくれるよ。」


「うそだよー!」





(本当なんだよ)


心の中でそう呟く。


外に出ると再び寒さが男を覆う。少し寂しい感情も混ざっていたのかもしれない。





家に着くと庭に向かった。


庭と言っても畳4帖程度の小さな庭だ。


そこに1箱ずつ2つのケーキを置く。





「もう1回、子供たちの笑顔が見たいなあ。来年頭下げにいこうかな。」





そう何気なく口にし、男は両手を合わせた。
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